※ 個人の解釈というか、めちゃええかげんな意見と思って下さい
ABA(応用行動分析学)について説明するのは、不勉強な私には難しいです。
そこで、
『応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学』島宗理著(2019)
のまえがきから引用させて頂きます。
「ヒューマンサービスの現場では、たまたまうまくいったことによる思いこみも生まれやすく、あるいは、「結局は人それぞれ」と、継続的な業務改善をあきらめてしまいやすくなる。
応用行動分析学はこのような課題を乗り越えるために役にたつ長所をもつ心理学である。人や動物の行動の振る舞いに関する実証された理論、効果が確認された行動変容のための様々な技法、目の前にいる人の行動を変えながら技法を開発し、効果検証を進めるための研究法を兼ね備える。さらに、研究に基づいた組織的な実践を推進するのに必要な技法のプログラム化やスタッフマネジメントの方法論、サービスの受けての価値観を反映させる仕組みも蓄積されている。」
私が勉強してきて感じたのは
- TEACCH はいろいろな実践法を試して、こういうことならできるよね、をまとめていった
- ABA はもともとが学問体系
なので傾向としては
- TEACCH は理屈抜き(特性からは考えますが)で「こう関わったらいいよ」を教えてくれる
- ABA はこういう理屈でこうなるから「こう関わったらいいよ」を教えてくれる
という違いがあるな、というあたりです。
しかし、たぶん、現在は 自閉スペクトラム症の人への関わりを考えている人は多かれ少なかれ両方を学んでおられるのではないでしょうか。
ABA は「記録・データ」を重視し、またもともと学問体系なので、論文の形で出ているものが圧倒的に多いです。
先程の引用部分に続いてこう書かれています。
「自閉症や知的障害がある子どもや成人への指導や支援に関する研究と実践で大きな成果をあげてきたことで、教育や福祉に関わっている専門家の間では「知る人ぞ知る心理学」となった。日本語で読める文献も増えた。ただ、逆にそのイメージが強すぎて、発達障害児のための指導法であると勘違いされることもある。シェイピングや行動連鎖化といった技法も、ロバースの早期集中行動訓練のようなプログラムも、応用行動分析学の研究成果の一例であり、学問体系そのものではないことは、図0-1からもわかって頂けるだろう。」
図0-1、は私の書き込みで見難くなっていますが、ご紹介します。
なお、上の文の中に「知る人ぞ知る」となっています。私は正直なところ教育や福祉などの対人援助について学んでいる学生にとっては「単語を知っている」というレベルでなく、ある程度は常識として知っている分野なのかな、と思っていたのですが、いろいろ勉強しているうちにそこまでも広がっていないのだな、という感想を持ちました。
また私がつまみ食いのように勉強をし始めた2000年少し前くらいだと、東京ではどうかわかりませんが、少なくとも私の地域の学校関係者で「行動分析(当時はこの呼び方が多かったと思います)」をまともに知っているものはおらず、「やたら反復練習させる」「困った行動をしたら罰を与える」というイメージがひとり歩きし、その虚のイメージに対して「だから行動分析なんてダメ」という批判が加えられていたと思います。
このあたり、TEACCH は TEACCH で「絵カードで相手を思い通りに動かそうとする非人間的な方法」という批判もありました。そう言われる方はたいてい「音声言語で相手を思い通りに動かそうとする人」である場合も多かったのですが。
ただし、「TEACCH を勉強した」と言う人の中に、視覚的支援を「相手をこちらの思い通りに動かそう」という目的でしか使っていない人もいたのも本当だろうとは思います。
そのあたりのことは「何のために」のページに書かせて頂きました。
あまり親御さんには関係の無い話になってしまったかもしれません。親御さんと ABA の関係となるとまずは「ペアレント・トレーニング」が挙げられます。お子さんに「どう関わったらいいんだろう?」と考える親御さん対象に、自治体や医療機関、また最近は特別支援学校などの主催でも「ペアレント・トレーニング」の機会が設けられている場合があります。(このあたりは地域・自治体によって違います)
厚生労働省令和元年度障害者結合福祉推進事業
『ペアレント・トレーニング実践ガイドブック』2020年
作成 : 一般社団法人日本発達障害ネットワーク JDDnet 事業委員会
協力 : 日本ペアレント・トレーニング研究会
の 6P にはこう書かれています。
「具体的には、ペアトレは行動理論を理論的背景としてプログラムが構成されており、行動の理解、ほめ方、環境調整、不適切な行動への対応等について保護者が学び、グループワークやホームワークを通して実践をするものです。子どもとの関わりがボジティブに変化するための重要な機会です。」
なお、ペアレント・トレーニングを実施する時は、専門家としての進行を行うファシリテーターとサブ・ファシリテーターが進めていくこと、となっており、そのファシリテートの元で使われるべきものなのかもしれませんが、そういうさいに使う資料として下のようなものも出ています。親御さんや、初めて関わる教師や支援者の方が一人で読んでも参考になるところがあるかもしれません。
強化は手段じゃなく目的では
このご意見はよく耳にするようになってきました。
つまり「ABA は、何かのスキルを身につけさせる手段として強化を使うのではなく、正の強化を受ける行動機会の選択肢を増大させることが目的では」というもの。どなたが言い出したのかは確信はありませんが、私は望月昭先生のご意見として見たのが最初です。
「行動的QOL : 「行動的健康」へのプロアクティブな援助」望月昭(2001)『行動医学研究』Vol7, 1, 8-17
さらに深めたい人のために
『3ステップで行動問題を解決するハンドブック―小・中学校で役立つ応用行動分析学』
大久保賢一著
2019年発行
Amazon の解説の一部
日々、学校や家庭で子どもと関わる中で、「なぜ言うことを聞いてくれないのか?」
「どうしてこんなこともできないのだろう」と思うこともあるでしょう。
「子どもが望ましい行動をやってくれない」「問題となる行動をやめてくれない」ことを本書では、『行動問題』と呼んでいます。
教育活動や子育ての中で『行動問題』を解決できるよう、応用行動分析学(ABA)の理論や技法を活用し、子どもの育ちを3ステップで伸ばしていきます。