もういろんなところで、「やっちゃダメ」と叱るだけでなく「こうしたらいいよ」を伝えないと何をしたらいいかわかりません、ということは言われています。例えば「走らない」→「歩く」など。しかしそれが最初からできる人はなかなかいません。つい「ダメ」「あかん」ばかりになりがちです。「◯✕メモ」は使う時に「あっ、◯を考えなきゃ」と思い出させてくれます。
実は1997年末から、2000年度の終わりにかけて、私は TEACCH を学ぶとすぐにウエストポーチに手帳や白い紙、筆記具を入れて「書いて、描いて伝える」「書いて、描いて尋ねる」をやっていました。その中で手帳に◯と✕を描いたページを作り、別の紙に質問を書いて尋ねたり、説明したりをやっていました。2004年におめめどうができ、「◯✕メモ」を販売し始めた時、すぐに「これは使える!」と直感しました。なかなか周囲の人に説明し、やってもらうのが難しいところなのですが、これが目の前にあれば、説明もしやすいですし、やってもらいやすいというのがわかりますので。それから勝手に宣伝していたら、2011年におめめどうフェローになったわけです。ただし、2004年から2009年くらいまではウツでほとんど何もしていませんが。
なお、これを見て「こんなん無くてもできる」とおっしゃる方もたくさんおられるのですが、その方たちが継続してやって下さっているかと言うと、やってくださっていないのじゃないかと思います。いちいち手書きをするのは面倒ですし。
ただ、これを使っても、やはり◯をうまく伝えるのには練習が必要です。またこれを使っても「ダメ」を強調することにもなりがちです。
失敗例
放課後等デイサービスで、あるスタッフさんが「◯✕メモを使ってみましたがダメでした」と言われて見せて下さったのがこれ。
やはり、具体的に「何がいいのか」「何がダメなのか」がわからないと伝わらないですね。
ちなみに、私はお子さんの前では「約束」という言葉は禁句にしています。お子さんはまだまだいろいろ成長途上で「□□までに〜〜する」とか約束していても、守れないことは多々あります。こちらが破らせてしまって、子どもに指摘するのはお互い嫌です。また逆に私がお子さんに約束したら「絶対に守らないといけない」と思っているのでしんどいです。なので「約束」という言葉は使いません。
していいこととしてはいけないことを伝える
これは「稲刈り体験学習」のさいの説明でしょうか。
これは「四コマメモ®」との合わせ技です。
実は「握手」も身体接触があるので「見るだけ」くらいのほうがいいのかもしれません。私自身は、私のカサブタに興味を持ってめくりにこようとする子に同じようなことを書き、描き、身振り手振り、そして「いたい」の部分はしかめ面と、「ガガガガッ」などの音声もつけて説明すると、「はっ」と息を吐き、笑って去って行きました。
有る無しを伝える
これは「明日はパン給食だよ、ごはん給食じゃないよ」を伝えていますね。
これは例えば大事件が起きて、Eテレでいつも見ている番組が「無くなった」ときにどうするといいか、を伝えているものですね。
それはこうなんだよ、それはちがうんだよ、を伝える
音声言語の意味理解がむつかしいと誤解もよく生じます。また小さいころから失敗を笑われる体験を多くしていると、側で笑っている子がいた時に、つい上記のような誤解をしてしまい、説明してあげることが必要になることもあります。
重要なこと
「してはダメなこと、してもいいことを伝える」と書きました。世の中のルールですね。「◯✕メモ」はその場でのルールなどを伝えます。便利です。
しかし、ルールにはルールができた理由があります。それを伝えられるようになれば ◯ ✕ の ✕ はどんどん必要無くなってきます。その時に使うのが「四こまメモ®」や「どうしてメモ®」になります。また文がよくわかるようなお子さんなら ソーシャル・ストーリー で伝えることもできます。そういった「なぜこうするのか」が伝えられるようになりたいものです。
さらに深めたい人のために
『かがやけ!なないろキッズ』新美妙美著 定価 1600円
以下は Amazon に書いてある説明。
周囲との関わり方に苦労することの多い発達障害の子どもたち。特別とも見られがちな性向や行動も「なないろ」の個性ととらえ、そんな個性を持った子供たちの成長をどうサポートしていくか、一線で奮闘中のママさんドクターがアドバイスします。「自閉スペクトラム症」「ADHD(注意欠如・多動症)」といった障害に見られる独特な行動の理由を説明しながら、子どもの魅力の活かせるような関わり方や生活に役立つ工夫を、年代別また学校や家庭でのシーン別に伝えます。安心感につながる「見通しを立てること」に役立つスケジュール・カレンダーなど「視覚支援」グッズの作り方もイラスト解説します。著者の小児科医・新美妙美さんは、精神科医・本田秀夫教授の「信州大学医学部子どものこころの発達医学教室」で特任助教を務めています。
『ソーシャル・ストーリー・ブック 入門・文例集[改訂版]』キャロル・グレイ著
定価 2200円
以下は Amazon に書いてある説明
ソーシャルストーリーは、高機能自閉症やアスペルガー症候群の子どもたち自身の理解力を高め、自分の意志で適切な言葉づかいや、行動ができるように導くもの。「新しい判定基準とガイドライン」が改訂されたのを受けて、2005年初版発行から11刷まで版を重ねてきた好評書の第1部を大幅改編。