声かけについては、おめめどう®から公開されていた子ども用の資料があったのですが、見当たりません。それを参考にして私が改変した<自閉症・発達障害の人に伝わりやすい声かけ>をご紹介します。お子さんにも対応しているかと思います。お子さんの場合は褒める時にあまり意識して「大げさにしない」ことを気にしなくてもいいかな。

 なお、音声言語でバリバリやりとりができているお子さんだとこんなものは必要無い、普通に喋って伝えればいい、とお考えになるかもしれませんが、青年期の方と話していても「えっ、こんな常識的と思えるルールも知らないの?!」という場面にでくわすことがよくありました。みんな音声言語では伝えていたり、暗黙の了解の中でわかっているはずと思われていた部分です。

 何らかのトラブルが頻発する場合には、書いて描いて伝えることも考えに入れてください。

 下にテキストを書きますが、その下に PDF ファイルもダウンロードできるようにします。なお、PDF は解説は少なめです。


2018年7月5日

自閉症・発達障害の人にわかりやすい声かけ 成人編

kingstone

※おめめどう資料<自閉症・発達障害の人に伝わりやすい声かけ>を元に大人向けに改変しました

-視覚的、具体的、肯定的な声かけ-

I .自閉症の障害特性から、考える声かけのポイント

1.視覚的に声かけしましょう。【視覚優位】

  • イスを指差しながら「このイスに座って下さい」(単に「どうぞお座り下さい」だけでなく)
  • 荷物棚の具体的な場所を指差しながら「持って来た荷物はここに入れて下さい」(単に「棚に入れて下さい」ではない)

※声かけと動作の合わせ技になっています。声かけだけで伝えようというのはそもそも苦しい。

※WISC4になってから「うちの子は聴覚優位なので視覚的支援を使わないで下さい」と言いに来られた親御さんが複数いらっしゃいます。WISC の勉強会に出ている方にお聞きすると「いえ、聴覚優位な自閉スペクトラム症の方には、本当に静かな部屋で、短い言葉で伝えると、視覚的なものより良く伝わるのですよ」ということでした。それで納得です。そのような状況は非常に少ないですし、特に焦っている時などは伝わりにくいはずです。またその方がおっしゃるには、講師の先生も「テスト結果が聴覚優位だからといって、視覚的支援ははずさないでください」とおっしゃっていたということです。

2.具体的に声かけしましょう。【抽象的な言葉がわかりにくい】

  • それだけでは映像化出来ない言葉は、単独で使わないようにします。
    • 「これ」「あれ」「それ」といった指示代名詞
    • 「しっかり」「きちんと」「ちゃんと」「ゆっくり」「さっさと」「よく」などの副詞
    • 「優しく」「きれいに」「正しく」「ひどい」「まじめに」「無駄だ」「急に」「自由に」「丁寧に」などのたくさんに意味のとれる形容詞、形容動詞
    • 「責任」などの具体物の無い概念
  • わかりやすい言い方
    • 部品を整理して入れているカゴと、組み立てる手順書、完成品を入れるカゴなどを置き、それぞれ指差しながら「ここにある部品を、この手順書の通り組み立て、できたらこのカゴに入れて下さい」(バラバラに部品がある状態のところに連れていき「責任持ってやってね」ではなく)
    • 「きれいにしてね」→「水を拭いて下さい」
    • 「ちゃんと片付けます」→「同じ絵を貼ってある棚に置いて下さい」
    • 「優しく置いて下さい」→「音がしないように置いて下さい」

3.肯定的に声かけしましょう。【求められていることがわかりにくい】

  • 否定的な声かけだけで、終わらないようにします。
  • ×には○を用意します。または○だけで示します。
  • 時間がある時には絵や文にして「なぜそうなのか」を説明します。
  • 「しゃべらない」→「静かにします」
  • 「走らない」→「歩きます」
  • (時間があれば)「歩くと周りの物に当たってひっくり返すことがないから歩きます」

褒めるということ

 これも「肯定的」に入ると思います。
 大人でも褒められることは嬉しいです。
 しかし何かをやっている最中に褒められるとうるさいだけかもしれません。
 基本的には、何かがはっきり終わった時に、小さい声で「いいね」とか言うのはいいことだと思います。
 また小さな動作でサムアップ(親指をぐっと上げる)などもいいかもしれません。
 ハイタッチはやめておいたほうがいいでしょう。日本ではスポーツなどの特別な時しか使われません。
 性別に限らず身体接触を伴う行為は、日本では日常的には使われませんし、下手をすると事件につながりかねません。(学童期の特別支援教育担当者にはよくお願いしておきたいと思います)
 大げさに褒めるのは「年齢相応」とは言えないので気をつけてください。

II. その他のヒント

1.注意喚起

 こちらに注目できる(している)時に、声をかけます。 後ろから急にとか、別の物に気をとられているときに声かけしても、驚くだけです。
 私は、

  • ご本人の正面に立ち、手のひらを目の前で少し上下に動かした後、自分自身を指差す
  • 後ろからしか行けない場合は、本当に軽く中指・薬指で肩をとんとんする

などを使うことが多いです。(しかし身体接触は気をつけて)

2.次にして欲しいことのみ、端的に伝える。

  • たくさんのことを一度に言わないでください。
  • (例)「部品を棚からとって来て、組み立てて、余った部品は棚に戻し、完成品は次の机の上に置き、報告に来て下さい」(私もわからなくなります)
  • 「部品を棚からとって来て下さい」(終わってから)
  • 「組み立てて下さい」(すんだら)
  • 「余った部品を棚に戻して下さい」(棚に戻して、ご本人が戻って来たら)
  • 「完成品を次の机の上に置いて下さい」(それが終わったら)
  • 「○○さんに『できました』と報告して下さい」

※書いていて思ったのですが、こんなこといちいち言ってたらめんどくさくて仕方がないですね。ご本人は指示で動いているだけだし。これ、全部手順書にすればいいことですね。そして「ひとりで判断して、ひとりで動く」それが大人ですね。

3.声の大きさ、調子

  聞き取れる範囲で、小さく、落ち着いた声で。
  ※ 周囲からご本人に伝える場合、基本は「目で見てわかる」です。
    音声言語はあくまで補助(あるいはこちらの都合)です。