※ 2020年の Morin らの調査で、特別支援教員がプレテストを受けた中で 4位。
  全体では 7位。

 機能的コミュニケーション訓練(Functional Communication Training:FCT)という言葉は、意味はわかるのですが、用語としてはあまり見たことが無いような気がして検索をかけてみると、下の論文がありました。

発達遅滞児の課題場面における問題行動への機能的コミュニケーション訓練 : 置換条件のもつ伝達性の検討」平澤紀子、藤原義博(1995)『特殊教育学研究』Vol.33, 2, 11-19

 この論文は学習時に問題行動(ママ)のあった2児について、その行動の機能分析(FBA)をすると回避(逃避・拒否)だった。そこで代替行動として1児については「おしえて」カード、「?/●」カードの利用を、1児については音声での「教えて」と「手たたき(これは何をどうやるのかは私に読み取れなかった)」の利用を教えたところ、指導者が即援助に入ることができ、問題行動が減り、正答が増えたというもの。またその後、それらの新しく身につけたコミュニケーション手段が相手に伝わりやすいかどうか(代替行動の1つ目と2つ目)で、問題行動の生起率がどう変わったか、について述べている。

 また総合考察の最後に、単に問題行動の低減だけでなく、課題への試行錯誤反応(つまりやる気になって考え始めている)や、標的外の援助要求行動が観察された、とある。ここは非常に重要だと思われる。

 AIFRM の講座内でも「学習の邪魔になる行動の消去」のところで、機能的コミュニケーションが成立し始めるとそもそも「学習の邪魔になる行動」が無くなり、消去する必要もなくなることもある、となっている。

 ここで言う「機能的コミュニケーション訓練」というのは、

 ある行動の機能分析 → 代替行動を選ぶ → 代替行動が使えるようにする → いろいろうまくいく

 という、「代替行動分化強化(DRA)」と呼ばれるものを、特にコミュニケーションに限定して考えるものだと考えらる。

 そして、コミュニケーションが機能的に(ちゃんと意図した通り)伝わるようになれば、当然問題行動は減っていくと考えられる。

以下に、「AFIRM の講座の構成」に書いたものを、そのまま転載します。

 AFIRM のひとつひとつの講座はだいたいこういう流れになっています。ここでは「機能的コミュニケーション訓練(FCT)」の講座の場合を例にあげて説明します。(ものによって長短あり、「機能的コミュニケーション訓練」は長い方かもしれません)

  1. 事前テスト(ブラウザの翻訳機能で訳せます。なお、この時点でざっとした応用行動分析(ABA)の知識が必要な2択から4択くらいまでが多いクイズになっています)
  2. FCTの事例(動画)
  3. レッスン1:FCTの基本
    • FCTとは何か?
    • FCTの目標
    • FCTは学習者にどのように役立つか?
    • FCTはどのように使われているのか?(使用例。音声だがスクリプト(台本)はテキストで載っている)
    • FCTのエビデンスベース
    • はじめに
    • 基本的な活動(スライドでのクイズ)
  4. レッスン2:FCTの計画
    • FCTに適した学習の邪魔になる行動を特定する
    • 学習の邪魔になる行動の機能を特定する(要求、回避・拒否、注目、感覚など)
    • 代替となるコミュニケーション行動を選ぶ
    • チームメンバー全員が代替となるコミュニケーション行動に精通していることを確認する
    • 支援資料を集め、整理する
    • 計画活動(スライドでのクイズ)
  5. レッスン3:FCTを活用する
    • 代替コミュニケーション行動の使用を教える
    • 代替コミュニケーション行動を強化する
    • 学習の邪魔になる行動の消去
    • 学習者が代替コミュニケーション行動を般化するのをサポートする
    • 代替コミュニケーション行動の形成(shaping)を考える
    • 代替となるコミュニケーション行動の強化を薄くする(主として「待つ」)
    • アクティビティを使う(スライドでのクイズ)
  6. レッスン4:FCTのモニタリング
    • 学習の邪魔になる行動に関するデータの収集と分析
    • 学習者の進捗状況に基づいて次のステップを決定する
    • モニタリング活動(スライドでのクイズ)
  7. FCTのリソースとツール
    • FCT用ツール
    • FCTの参考文献
    • FCTリソース
    • 用語集
  8. 評価と査定(事後テスト)

※だいたいは1項目1〜2画面に収まります。学習者に達成感が得やすいようにだと思います。

 最初の動画は実際の授業風景などが出てきており、どういうお子さんが対象なのか、どんな授業が行われているのかよくわかり(見本になるようなものばかりではなく、うまくいっていないものも出てきて、どこが課題かを考えさせたりもする)、とても興味深いです。
 ほんとうに面白いので、アカウントを作って見て見られることをお勧めします。

※資料について

  • 事前アセスメント用、計画用、モニタリング(事後評価用)などのワークシートもついている
  • 「機能的コミュニケーション訓練(FCT)」の場合、全部まとまっている 「FCT EBP Brief Packet」という全 22 ページの PDF が講座の中でダウンロードできる。その中にワークシートも入っている。ただし、ワークシートが単機能のものに別れているものも別にある。
  • ものによっては Council for Exceptional Children(CEC : 特別支援児童協議会)の資料が入っていることもある。

さらに深めたい人のために

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