㈱おめめどうについては、フッターにも書いてある通り、私はおめめどうフェローであり、バリバリに利益相反はあり、それだけにどう語ればいいのか、迷うところはあるのですが、できるだけ言葉にしようと思います。
おめめどうの歴史
奥平綾子は、生まれも育ちも丹波篠山です。
次男が幼い時に自閉症の診断を受けました。その日は泣いたそうですが、次男の障害について泣いたのはその時と、あともう1回の2回だけだそうです。それから育て方について模索の日々が続くわけです。当時の丹波篠山ですから、特別支援教育や福祉の資源が特にあるわけではありません。しかし、そう頻繁に通えたわけではないながらも、ついていた ST さんが「何か、アメリカのほうでは、どうやら見せたほうがいいらしい、と言われているようです」ということを教えて下さり、そこから試行錯誤が始まります。
そして TEACCH や ABA も体験し、学び、また NIFTY-Serve の「障害児教育フォーラム」でも多くの方との交流を通して学んで行きます。
また TAS(丹波篠山自閉症協会)を作り、講師に来て頂いて講演会を実施し、そこに親御さんも来て頂けるように、託児活動(ボランティアの主力は丹波篠山の中学生・高校生)も始めます。また夏季に、宿泊キャンプ場などに行く活動もしていました。
そんなこんなで、次男さんの小学校生活は、いろいろ事件は起こりながらも、何とか過ぎて行きました。
しかし、小学校支援級ではおひとりの担任と次男さんとのやりとりですむところが、中学生になると教科担任制になるので、今までの自作視覚支援物を教科担任全員分作るなど、とても無理。また直接伝えて頂けるいい方法はないか、と考えて「おはなしメモ®」「みとおしメモ®」などを作り、たくさん必要になるので、それ以前に出していた書籍「レイルマン」を含めて販売する会社を作ろうということになり、2004年に起業しました。
おめめどうという会社の形態
おめめどうの社員は全員、自閉症のあるお子さん(現在は成人)の母親です。そのため始業がだいたい 10時、退社時刻がだいたい 15時(送り出し、お迎えがあるため)で、かつその時間帯、全員ずっと出勤しているわけでもありません。(私は年に1度行く程度ですが、その時顔を見ない人もいる)
それでも回る体制を作り、販売については早い段階から Eコマースを作ったり、メーリングリストでの相談(今ならサロンにあたるか)など、今では当たり前になった、しかし当時としては先進的な取り組みをしていました。
それで19年続いています。
syunさんのこと(おめめどうアドバイザー)
※ syun さんは、2023年8月30日、お亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。
syun さんは、私が出会った頃は知的障害者通所更生施設(現在だと、就労支援B型とか生活介護とかにあたる。地域で一番障害の重い方が来ていた)に勤務していました。
1997年に施設見学をさせてもらった時、私がぱっと見たところでは、syunさんのグループは2人の支援者に14〜5人の成人(特別支援学校で一番重度の方から順番に14人と思って下さい。なお syunさんの記憶では、支援者3に利用者21人ということです)。
で、私がびっくり仰天したのが、もうおひとりのスタッフに「じゃあ kingstone さんを案内してくるは」と言って出て行ってしまったこと。つまり1対14〜5人になるわけです。現在の特別支援学校で考えられるでしょうか?
なお、当時から syunさんは、スケジュールの重要性を強く言っていましたが、私の目には見えませんでした。その時の秘密がわかったのがこちら。またその方たちが、自分で個人用スケジュールを管理していたことにも驚きました。
なお、当時の個人スケジュールを再現してみると、もちろん当時は「みとおしメモ」はありませんから B5の紙を縦半分に切ってこのようなものを作っていたということです。
見て頂くとわかるように、作業の部分が空欄です。これはその日に利用者さん個人がやりたいことを選ぶということにしていたのです。他のグループでも良いのですが、もちろん他のグループに行って、その日はできないと断られることもあります。そのグループの責任者本人から伝えてもらうわけです。すると利用者さんは納得されて、また別の作業を選ぶ、というシステムをとっていました。
これも驚愕でした。
そしてそういう活動の中で養護学校(当時)で手に負えないというような状態になっていた人も、落ち着いて過ごせるようになっていっていました。
そのような実践・経験・学習を元におめめどうにアドバイスをしています。
私とおめめどう
私自身も、NIFTY-Serve 障害児教育フォーラムで、たくさんのことを学び、私は奥平とお互いにハンドルネームは知っていました。
ある時、大阪で TEACCH に関する講演会があった時、たまたま隣に座った女性と話をしていたら、奥平だったのでお互いびっくりしました。
私は地元でも学習会をしたり、託児ボランティア活動をしたりしていましたし、私が丹波篠山の TAS の活動を手伝ったり、奥平が私の学習会に参加したりしました。
ところが2004年くらいから、私はウツに沈み、ネタキリになりおめめどうができた頃くらいからおつきあいがなくなりました。
2010年くらいから、私は動けるようになり、おめめどうの支援グッズを「これはいいよ」と勝手に宣伝していました。すると2011年に「手伝って」と言われ、おめめどうフェローとなりました。フェローという名前にしたのは私です。「中の人」「雇われている人」ではなく、少し距離のある感じを出したかったからです。
初期のサイト(ECサイトでないほう)を作っていましたが、その後後任に託し、今はそのサイトはありません。
奥平のエピソード
当時、「私の中のショプラー VS ロバース 論争」とつぶやきながら料理を作っていた、というエピソードがあります。ショプラーは TEACCH 創設者、ロバースは、ABA のロバース法を確立した人です。
次男さんの障害の件で泣いた、あと1回は、次男さんが小学校1年生の5月(入ったばかりですね)の時に、小学校支援学級の担任が「見てないみたいだから、スケジュール取っていいですか?」とおっしゃった時とのこと。あるあるですね・・・
自閉スペクトラム症のお子さん、まじまじと見つめるタイプ、まるで見ていないかのように視線の端で捉えしかしきっちり見ているタイプ、いろいろおられます。
この時奥平が泣いてお願いし、継続して頂けました。この先生、ゆっくりながら視覚的支援の大事さも理解され、退職後、教育委員会から請われて、地域の特別支援教育のスーパーバイザー的な位置につかれました。
泣いてでも継続してもらえたのは、家庭でやっていて、大切さを実感していたから。そしてそのことによって教師もより高い知識・技術を身につけることができたのじゃないでしょうか。
視覚的支援を始めたみなさん、めげずにお願いし続けて下さい。
自分の子ども以外で泣いたエピソード。夏季キャンプのおりにあるお子さんが、いろいろわからず出ていってしまい、長い時間かけて私が連れ戻したことがありました。その時、「(その子に)私は何もしてあげられない、無力や」と言いながら号泣する横に、私はなすすべもなく、座っているしかなかったことを覚えています。
よく泣いてます。
おめめどうの考え方や支援グッズが有効である、というエビデンスについて
このサイトは「自閉スペクトラム症の方への根拠ある関わり方」と題しており、実際にそういうものを紹介しようと考えています。
おめめどうの考え方や支援グッズを使うことが(他の様々なものよりも)有効だ、というエビデンスは無いと言っていいくらいです。使って良かった、というエピソードはたくさんありますが、エピソードは最低ランクのエビデンスとされます。
ただし、「自閉スペクトラム症の方へ、視覚的支援は良い」というエビデンスはあります。AFIRM でも「Visual Supports」として出てきます。
そのエビデンスある Visual Supports をより手軽に行えるグッズ、継続できる(これが難しい。特に家庭では自作ばかりやっていると疲れてしまいます)グッズと考えれば良いのでは無いでしょうか。
またエビデンスと言えば、論文の形で出されていないと認められないところがあります。おめめどうへの言及がなされた論文は私の知りうる限り
「構造化・視覚支援に重点を置いた保護者向け支援技術講座の試み」新美妙美(2018)『日本小児科学会雑誌』Vol 122, (12),1863
「重度知的障害者の意思決定のための支援」市岡公子(2012)福井県立大学大学院修士論文
の2点です。しかし残念ながらネットでは内容は読めません。
追記(2023.8.11)「重度知的障害者の意思決定のための支援」の終章のみは、奥平のブログでテキストで読むことができます。
『レイルマン: 自閉症文化への道しるべ Kindle版』奥平綾子著(2002年)
Kindle 版。1000円
kindleunlimitede 会員の方は無料で読めます。
なお、著者としては、今の目から見ると直したいところもあるようです。
表紙は戸部けいこ先生、まえがきは門眞一郎先生。
Amazon にある説明から(一部)
ダダくんとの二人旅を綴った「旅日記シリーズ」は、自閉症児を連れても旅行がいけるんだ!(しかも、母親がたったひとりで!)という驚きをもって、受け止められました。
いろいろな手だてを使っての旅日記は、多くの人から共感をいただき、その後、自閉症児を連れて、旅行することへの後押しになったようです。
『レイルマン2: 自閉症文化の愉しみ方 Kindle版』奥平綾子著(2004年)
Kindle 版。1000円
kindleunlimitede 会員の方は無料で読めます。
なお、著者としては、今の目から見ると直したいところもあるようです。
まえがきは内山登紀夫先生。
Amazon にある説明から(一部)
5歳6ヶ月の時に、ダダが「選んでいない」ことに気がついて、驚きました。
彼は、たくさんのこだわりがあって、いつも自分の順番や好みのものだけをしていましたので、私はてっきり「選んでいる」と思っていました。
でも、それは、私たちの「選択活動」とは、全く違う形をしていました。
それから「選択」をはじめ、そして、今12歳のダダはあらゆることを自分で「選んで」「決めて」暮らしています。
そう、私たちと同じように。当たり前の暮らし。
『自閉症・発達障害の人と伝えあおう、わかりあおう』奥平綾子(2013年)
1100円
Amazon にある説明
自閉症の人とわかりあおう伝えあおう 自閉症と診断された息子と向き合い「自閉症には視覚支援が良いらしい」と知ったその日から、著者は当事者がわかり易く、使いやすいもので、その思いを自ら発信できる「コミュニケーションメモ帳(コミュメモ)」を次々と創り上げました。この本では「なぜコミュメモなのか」「どう使うと良いのか」を丁寧に解説しています。支援する人たちには、目からうろこの一冊です。 言葉を喋る自閉症者は、発する言葉故に本心とは違うメッセージとして受け取られがち……「書く」(筆談する)ことで、本当に言いたいことが見えてくる。そのためのガイドブック。
『syunさん語録 障害とは 支援とは』大西俊介・奥平綾子著(2020年)
2000円
おめめどう ECサイトの説明から
おめめどうのオブザーバー大西俊介@syunさんによる「100の語録集」がでました。
セミナーで、相談で、語られる言葉を、何番目かの弟子、不肖奥平綾子@ハルヤンネが、「syunさん語録+注釈@ハル」というスタイルでまとめさせていただきました。
おめめどうの支援のベースにある考え方や、グッズがどういう役割をするものなのかが、これを読めばよくわかっていくでしょう。
徹底的な本人目線。至るべきところは「ここ」なんです。
読者の感想
【福祉書評6】これがわかればあなたも達人!『syunさん語録〜障害とは・支援とは』
おめめどうのサイト紹介
巻物カレンダー®・各種コミュメモ・その他の支援グッズ・書籍・セミナー・相談メーリングリスト・無料のショップメルマガ、などいろいろなものが販売されています。