自閉スペクトラム症のお子さんや成人の方を支援する時、考えておくと良いことはいろいろあります。おめめどう®では、元々親御さんに伝わるようにするため、わかりやすい言葉を使うことが多いです。実のところ、他の方法の中でも言い方は変わっても、中に入っていることだと思います。ただ、こちらがわかりやすいと思うので書いておきます。 

視覚的・具体的・肯定的

  • 「見てわかる物を使って理解してもらうようにすること」そして意思表示もまずは「見てわかるもの」をできるだけ用意しようとします。
  • 「具体的」というのは、ことばで指し示すとしても「見て書ける(描ける)具体的な物の名前を使おうということです。抽象的な概念はわかりにくいので。
  • 「肯定的」というのは「〜しない」ではなく「〜する」の形で伝える、ということでもあります。「叱る」のでなく「褒める」ということでもあります。また「相手の存在を肯定し認める」ということでもあります。

5つの大切

①見通しのある暮らし

  • 時間や手順の見通しですね。具体的にはその人が見てわかるカレンダー、スケジュール、手順書etc.になります。

②自分のことは自分で選ぶ暮らし

  • 自分のやりたいことをする、自分の使いたい物を使う、これは誰にとっても当たり前の暮らしですね。その時「選ぶ」という行為(意思決定)をします。これを「選択活動」と言って大事にします。

③伝えあおう・わかりあおうのおはなしのある暮らし

  • 「やりとり」「コミュニケーション」ですね。「視覚的・具体的・肯定的」に。

④杖の役割

  • 杖は支えてくれるものです。支援と言ってもいいかもしれません。片麻痺の片が杖をついて歩く時、どちらの手で杖を握るでしょう。麻痺した使うのが苦手な方の手ではありません。よく使える得意な方の手です。つまり、その人の「強み」「得意なこと」「好きなこと」を支援していこう、という態度です。
  • これは私だけが思っていることかもしれませんが「杖は使っている人に説教してこない」というのも大事な点だと思います。「(こうしたらもっと良くなると思って)ああせい、こうせい、これしちゃダメ」などと説教してはきません。

⑤年齢と性別の尊重をされた暮らし

  • 幼児には幼児らしく、思春期のお子さんには思春期のお子さんらしく、成人には成人らしく。

予算軸・時間軸

  • 「時間軸」というのは自閉スペクトラム症の方は「見通し」がたちにくいので、上でも書いた「見通しのある暮らし」ができるようにしていくことが大切だということ。
  • 「予算軸」というのは、お金の価値を知り、稼ぐ、貯める、使うなどを知っていくことの必要性ということです。年齢相応から考えても小学生くらいからは始めたほうがいいでしょう。そしてこれが成人になっての「働く」や「計画的にお金を使う」につながっていきます。

思春期のテーマ

①親子分離

  • できるだけ離れていけるようにします。口出ししたくなっても我慢。そのためには「見てわかるものを使ってひとりでできる」ことを追求していくことが必要です。
  • もちろん「要求を伝えてくれる」のは大歓迎で、そこからコミュニケーションし、必要な環境を整えたりします。

②直接対峙

  • 「親子分離」とも関係しますが、お子さんに関わる方には「親が双方に代弁して伝える」のではなく、相手の方とお子さんに直接対峙して頂くようにします。そのためには、相手の方にも「書いて、描いて伝える」などの手立てを知って頂く必要も出てきます。その場合「なぜ書いて、描いて伝える」が必要か、の説明をすることも必要になるかもしれません。そのためにはご家庭で「見てわかるものを使えば、ちゃんとやりとりができる」と実感できていることも大事です。

③予算軸

  • 上に書いたようなことです。

④自己責任

  • 「自己責任」という言葉は新自由主義経済の流行で「あなたの経済的苦境は、自己責任だから助けないよ」というような冷たい意味で使われることが多いです。しかし、この思春期のテーマ(実はこれは幼児期からでもあります)の「自己責任」というのは、自分でやったことの責任は自分で取る、という意味です。障害のある方は、自分の行動の責任を最後まで取らせてもらえないことも多いのです。もちろん周囲の方が「良かれと思って」なわけですが。
  • 例えば「牛乳」と「ジュース」があって、本人が「牛乳」を選んだ。親御さんは「おかしいな?牛乳は嫌いなはずなのに」と思い「あんた牛乳は嫌いやろ。ジュース飲み」と牛乳を飲ませなかったら、本人の選択という行動の責任を取らせてあげられないわけです。じゃああなたが選んだのだから、と牛乳を渡したところ、1口飲んで、やっぱりまずそうで残した。その時に「そやからジュース選んだらええのに」と叱る必要もないし、飲むものがなくて可哀想だからとすぐにジュースを渡す必要も無いわけです。自分が選んだ責任を自分がとって「残す」をしたのですから。何なら流しまで行って流して、コップを洗って洗いかごに伏せて入れる、までしてくれれば完璧ですね。(脱水症状になりそうな時期なら、少し時間を置いてから再度選ばせてあげてください)
  • あるいは、小さいお子さんに多いですが、不器用で何か物を落としてしまう。周囲にいるやさしい人は拾ってあげて手渡ししてくれるかもしれません。でもそれを続けていると、特に自閉スペクトラム症のお子さんは「他人が拾ってくれて当たり前」になるかもしれません。拾わずにおくと、自分で拾うようになることが多いです。ただし、自分に大切なものであれば、ですが。

⑤表出のコミュニケーション

  • 意思表示のことですね。特に自発の意思表示は大切です。「この子は障害が重くて何を考えているかわかりません」と言われるようなお子さんでも、あの手この手を使って意思を確認することができるようになっていきます。その具体的な方法はまた別記事で。

※思春期のテーマと書いていますが、その時期により重要になる、というだけで、小さい頃から年齢相応には大事なことになります。

仲間はずれにしない

  • おめめどうでは2011年の東北大震災以来、強く主張するようになりました。みんなが情報が無くて困っている中、特に自閉スペクトラム症の方たちに情報、見通しが伝えられない。良い情報も、悪い情報も簡略化したとしても、ちゃんと伝える必要があります。何かの復旧見込みとかだったら、もちろん何が起こるかわかりませんが、余裕を見て日にちを伝えるとか。嬉しいことが、予定より早くやってくるのを怒る人はあまりいませんし。
  • また最近は、教育や福祉の分野で、学習や支援についての話し合いをする時、できる限りご本人もその場にいることが勧められます。そしてご本人の意見を反映させよう、という考え方になってきています。もちろんそんな場に座っていることが苦痛だ、という方もおられるかもしれませんが、短い時間でも居て頂く努力を支援者はしたいものだと思います。