自立課題学習というのは、TEACCH の提唱した Independent Task を訳したものです。
「自立」というのは、「最初から最後までひとりでできる」くらいの意味です。途中で音声による指示や、褒めることすらしません。もちろん全てが完了した後に、お子さんなら「やったね!」とか「すごいね!」とか声をかけてあげてもいいでしょう。成人の方になら「うん」とうなずくだけでも「あなたは頑張りましたね」と伝えられるかもしれません。
「でも初めてならできないだろう」という場合、後ろから「できるだけすぐに離れられるようにしながら」手をもってやらせてあげたり、開始する前に見本の動作をしてあげておいたりします。
なぜこれが「視覚的支援」のカテゴリに入っているのか、と言うと、
- 「見えているもの」が無くなったらおしまいがわかる
- 課題をどう配置したら見やすくて直感的にわかるか
- どんな「見てわかる手順書」を考えるか
など、視覚的支援を駆使して、自閉スペクトラム症の方にわかりやすくするか、を考えて取り組むからです。
大事なこと
大事なのは、
1. ひとりでできる
2. できた!やったー!と思える
ことです。
よく「褒めることが大事」という言い方がされますが、いろいろ継続していると、「(人ではなく)課題を完成させたことそのものがお子さんを褒める」ことになっていくでしょう。さらにそれを人が認めてくれたら、充実感は倍増します。
また、これは大事なことなのですが、自立課題学習の場合
- ものごとの始まりと終わりがはっきりする
- 3つの課題があれば、1つ目、2つ目、3つ目というふうにやっていくことで、時間の流れということに気づく
という効果があります。これが現時点でスケジュールというものがわかっておられない人が、スケジュールを理解する端緒にもなります。
自立課題学習の解説動画です。
参考資料
【参考】私がまだ自立課題学習を知らなかった頃の授業の失敗例 1997年6月
【参考】自立課題学習に取り組み始めて1年と少し後 1999年1月
※大学出たてで、「何もご存知無い」新人講師の先生方お二人も、同じことができていました。この日は1対4、普段は1対5、そして自立課題学習だけではなく、「コミュニケーションの必要な授業」も同時進行させています。
【資料】自立課題学習とは
これは、自立課題学習のワークショップをした時に、ある先生が、いくら説明しても「褒めたい」「声かけしたい」とおっしゃるので作った資料です。少し「ムカ」が入っています。
放課後等デイサービス「コッコロ」で使っている自立課題学習の紹介資料です。
自立課題紹介ビデオ(これは時間がかかるだけで、上の画像資料のほうが時短でいいかもしれません)
手順書をつくる時、カゴの側面につける手順書の枠をエクセルで作っていました。
これを切り、ラミネートしたうえで、カゴの側面内側に貼り付けていました。
元のエクセルファイルをダウンロードできるようにします。もともと画像を外し、お好きな課題の画像や、手順をおはりください。なお、エクセルファイルですので、私はウィルスチェックの技術は持っておりませんので、ダウンロードは自己責任でお願いします。
じ
さらに深めたい人のために
『自閉症のひとたちへの援助システム』
この本は、1999年に出版された古い本ですが、早くにお亡くなりになった鈴木伸五さんの書かれた「第3章 構造化の理解と実際」のところが、わかりやすい図もあいまって、素晴らしいです。(文は安倍陽子さんも書かれていると思います)
- スケジュール(時間のみとおし)
- ワークシステム(作業や学習がしやすいように、わかりやすい環境設定)
- 教室配置
など、またスケジュールの変化などもわかりやすく、解説されています。
価格は500円+税 (たぶん表記が 550円となっているのは税込み価格)というたいへん安い本ですので、是非とも購入されることをお勧めします。
一般の本屋さんでは売っていませんが、朝日新聞厚生文化事業団の「ガイドブック・DVD」のところから購入することができます。
『TEACCHプログラムに基づく自閉症児・者のための自立課題アイデア集』林大輔著・諏訪利明監修(2019)
第2集も出ています。
Amazon の説明より
TEACCHプログラムの実践手法の一つで中~重度の知的障がいを抱える利用者も、初めから終わりまで自分ひとりで実践でき、自立的に行動できるツール「自立課題」。支援にうまく取り入れれば、日課・プログラムの軸にもできます。
自立課題を日課・プログラムに組み込むポイントも掲載。自立課題をどのように計画し、製作し、提供すればよいのか、実際の自立課題例と、その製作・提供のポイントを見ていくうちに、悩める支援者も自然と理解でき、実践に活かせます。