※ 2020年の Morin らの調査で、特別支援教員がプレテストを受けた中で 5位。
全体では 3位。
うながし(Prompting : PP)とは、ASDの学習者が目標とするスキルや行動の成功率や般化率を高めるための効果的な、行動をうながす方法です。
3種類のうながし手順
- 最小から最大のうながし(Leaast-to-Most Prompting)
- 何もしないところから始まって、だんだんうながしをたくさん入れるようなものか?たとえば「りんご」と書かれたカードを提示してまずは黙って読めるかどうかを見て、読めなければ「り」と言い、さらに「りんご」まで指導者が発声するとか?
- 段階的指導(Graduated Guidance)
- 強めのうながしからはじまり、指導活動中に徐々に弱く少なくしていき、最終的には無し(フェードアウト)にまでもっていく。
- 同時うながし(Simultaneous Prompting)
- 「何をするか」と「その作業を成功させる」うながしが同時に出される。確認(プローブ)時には、「何をするか」や「開始」の合図だけが出され、できるかどうか見ていくが、これも最終的には無し(フェードアウト)にまでもっていくのでは?
5つのうながしタイプ(例:手を洗う場合)
- ジェスチャー(Gestufao Prompts:手をこすり合わせて見せるなど)
- 口頭指示(Verbal Prompts:「手を洗ってください」と言うなど)
- 視覚的うながし(Visual Prompts:手順を写真を並べて見せるなど)
- モデル(Model Prompts:完全にやって見せる、から半分くらいやって見せるなどまで)
- 物理的うながし(Physical Prompts:手をトントンする、手を持って洗わせる等)
プロンプトフェード手順の指定
- プロンプトの強度を下げる
- プロンプトの種類を変更することで提供するサポートを減らす
- プロンプトをすぐに削除する
どのように使っているか(音声)
早期介入者 フローレス先生
私はミラに対して、同時うながしを使って色を合わせることを教えています。私たちの指導セッションでは、彼女が色を正しく合わせているかどうかを確認するために、手をとってさせるのをコントロールプロンプトとして使っています。プローブセッションでは、私はプロンプトを与えませんが、ミラが色を学習している進捗状況を判断することができます。
初等特別教育教師 ジョーンズ先生
コリンは読むことはとても上手です。彼は長い単語を音読するのが苦手です。私たちは、難しい単語を少しずつ音読する、最小から最大のうながしを使うプロンプト・ヒエラルキーを開発しました。
高校の特別支援教育専門員 オークス先生
エリオットに洗濯物の仕分け方を教えるのに、段階的指導を使っています。私は、エリオットが色物と白物とを仕分ける場所を促すために、身体的なうながしを使っています。その後、徐々に促すのをやめていきます。しかし、彼が間違えたら、また身体的なうながしを始めます。
思ったこと
自分が相手(ASD のお子さんや成人)に対してどんなうながしを出しているかを意識することは大切です。無意識のうちに不必要なうながしを出してしまっていて、学習の成果が上がらなかったり、「このお子さんは◯◯のことがひとりでできます」というのが、実は無意識のうながしからの情報で動いているだけで、ひとりではできなかったり、そもそも理解していなかったりすることもよくあります。
しかし、初めてお子さんに診断を受けられた親御さんや、初めて特別支援教育を担当される先生や、福祉事業所のスタッフさんは、AFIRM の講座にあるような点まで、きっちりアセスメントし、計画し、実行、評価する必要までは無いのじゃないかな、と思いました。
もちろん、世の中には行動障害がたいへんシビアな方がおられるので、そういう方に対応する時には、必要になるのですが。
また、うながし(プロンプト)はある意味「技」と言っていいと思うのですが、そこに最初に細かく拘泥してしまうと、
- 今、このお子さんにこの課題は必要なのか?
- この課題は、お子さんのモチベーションを上げるものになっているか
- 今、この課題は、このお子さんにとって難しすぎないか?
という一番大事な部分を考えることがおろそかになるような気がします。
あと「視覚的うながし」についてなのですが、上の手を洗う例で言えば、初期に指導者が横に居て、写真を順番に指さしつつやらせればこれは「うながし」ですが、だいぶルーチンとしても定着し、しかし少し手助けが欲しいという時に、蛇口のそばに写真が貼ってあり、それを自ら参考にするために見る場合、これはうながしなのだろうか?という疑問があります。
「それもうながしと定義する」という立場もあるかもしれません。しかし、そう定義したとすると、その「視覚的うながし」はフェードアウトを頑張ってするものとは、私には思えません。
やはり「視覚的うながし」と呼ばれているもののうち、「人から与えられる」ものではなく「自ら人を介さずに利用する」もの場合は、「うながし」とは違うものに変わっているような気がします。
事前環境調整ですね。
さらに深めたい人のために
『3ステップで行動問題を解決するハンドブック―小・中学校で役立つ応用行動分析学』
大久保賢一著
2019年発行
Amazon の解説の一部
日々、学校や家庭で子どもと関わる中で、「なぜ言うことを聞いてくれないのか?」
「どうしてこんなこともできないのだろう」と思うこともあるでしょう。
「子どもが望ましい行動をやってくれない」「問題となる行動をやめてくれない」ことを本書では、『行動問題』と呼んでいます。
教育活動や子育ての中で『行動問題』を解決できるよう、応用行動分析学(ABA)の理論や技法を活用し、子どもの育ちを3ステップで伸ばしていきます。
『応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学』
島宗理著(2019)
まえがきより
ヒューマンサービスの現場では、たまたまうまくいったことによる思いこみも生まれやすく、あるいは、「結局は人それぞれ」と、継続的な業務改善をあきらめてしまいやすくなる。
応用行動分析学はこのような課題を乗り越えるために役にたつ長所をもつ心理学である。人や動物の行動の振る舞いに関する実証された理論、効果が確認された行動変容のための様々な技法、目の前にいる人の行動を変えながら技法を開発し、効果検証を進めるための研究法を兼ね備える。さらに、研究に基づいた組織的な実践を推進するのに必要な技法のプログラム化やスタッフマネジメントの方法論、サービスの受けての価値観を反映させる仕組みも蓄積されている。