※ 2020年の Morin らの調査で、特別支援教員がプレテストを受けた中で 7位。
  全体では 8位。なお、管理職に限ると3位。これは、IDEA(個別障害者教育法)の1997年の修正で、
「1年で10日以上の停学、退学、オルタナティブ・スクールへの転校措置のリスクのある、障害のある全ての児童・生徒に対して完全版FBAを実施するよう求められている」ため、それらの決定をしなければならない管理職は、FBA をよく理解することが必要であるからと推測される。

 機能的アセスメント(Functional Behavior Assessment : FBA)とは、と記事に書かれた文で短く説明したいと思ったのですが、そんな「定義」は書いてありませんでした。
 無理やり私の言葉で短く説明すれば、「(周囲にとって)お子さんが何か困った行動をしている時、ABC 分析をして、行動の結果(C)、子どもが何を得ているのかを明らかにし、それに基づいてどうすれば困った行動を減らせるかを考え、実践していくこと」というふうになります。

 また最初のほうの説明として

At times, all children and youth can struggle with challenging behavior. If a challenging behavior interferes with the learner’s ability to learn, then a functional behavior assessment (FBA) is needed.

「時には、すべての子どもや青少年が challenging behavior と闘うことがある。 challenging behavior が学習者の学習能力を妨げる場合、機能分析(FBA)が必要である。」

と書かれてあったのには、少し感動しました。「本人もその行動と闘っているのだ」という視点ですね。

 あと、ひとつ不思議だったのは、行動の結果何を得たかを「要求」「回避・拒否」「注目」「感覚」に分けてはいるのですが、ここでは「要求」「回避・拒否」だけを考える点。私の体験では少なくとも「注目」はかなりの事例があるし、考えることが必要だと思うのですが。

どのように使っているか(音声)ただしテキストの台本もあり。

早期介入者 ディクソンさん

 ブレイドンは本を読むのが大好きで、図書館に本を借りに行きます。しかし、彼は図書カードの限度以上の本を借りたがりました。貸出冊数が足りなくなると、ブレイドンは地面に倒れ、蹴ったり、叫んだり、泣いたりしていました。母親は私にその心配を訴え、私たちは機能的行動評価を実施することにした。機能的アセスメントのおかげで、ブレイドンがなぜそのような行動をとるのかを理解し、その行動に対処するための戦略を考えることができました


 これは「要求」と考えられますが、対処するための戦略としてどうやったんだろう?お子さんによるだろうけれど、

  • カレンダーで次回来るのがいつかを伝え、その時借りることができることを伝える
  • 視覚支援物でルール(1回◯◯冊まで)を伝える
  • 借りれる冊数の枠を借りれる数分用意し、そこに借りる本を置いていき、いっぱいになったらおしまい、を伝える

 くらいか。ブレイドン君が行動の結果、何を得ているのかが、この文からは読み取れないので、結果の方の手立てを考えることができませんが。


初等特別教育教師 ルーカス先生

 ジャミソンは休み時間に仲間と遊ぶのが苦手で、よく一人で遊んでいた。仲間が寄ってくると、仲間を押したり、叩いたりし、それがエスカレートしてきた。現在、機能的アセスメントのためにデータを集めているところである。それが完了したらチームで集まって話し合う。


 この例は「チームでやるんだよ」ということを我々に強調したいのかな。


高校英語教師 フォード

 コーラは、グループディスカッションの時間になると、イスを押しのけ、耳を塞ぎ参加しようとしない。グループに参加したくないのか、と思ったが、チームで機能的アセスメントをした結果、「彼女の行動は質問を理解していない結果」であり、グループを開始する前に単独で課題に取り組む時間が必要であることがわかった。そこで事前に課題(質問)を渡した。すると彼女は課題に取り組み、グループの準備もし、グループディスカッションを避けることも無くなった。


 事前準備ですね。

チームを作ること

「多職種チームの結成(Establish a Multidisciplinary Team)」のところで、IEP(個別教育計画)ミーティングのチーム(それをそのまま流用してもいいし、他の個人を混じえても良い)のように、機能的アセスメントチームを作ることが述べられている。その中には以下の人たちが含まれているべきとされている。

  • 担任教師(場合によっては特別支援教育担当と通常学級教師)
  • 学習者と関わる関連サービス担当者(言語聴覚士、作業療法士、行動療法士など)
  • 学習者と直接関わる準職員
  • 学習者の両親または家族
  • 学習者(発達が適切な場合:つまりその場に居ることがしんどすぎる場合は除く、ということだろうな)

 そしてチームができたら、機能的アセスメントコーディネーターとして一人を決める。(機能的アセスメントに関連した訓練と経験を有するべき、とあるが、現在だと特別支援学校でも1校に1人居るかどうかで、チームにそういう人がいるのはなかなか難しいのじゃないかな?)
 しかし、やはり「チームで関わる」ことを重視しているのはよく伝わって来ます。

妨害行動に対処する適切な EBP を特定する

 「妨害行動(学習を妨害する行動)に対処する適切な EBP を特定する」の項目では、下のような実践例が上がっています。

  • 注目
  • 回避・拒否
    • 事前環境調整(ABI)
    • 反応妨害と方向づけ(RIR)
    • 機能的コミュニケーション訓練(FCT)
    • 消去(EXT)(これはものによるなあ)
    • 分化強化(DRA/I/O)
  • 感覚
    • 事前環境調整(ABI)
    • 反応妨害と方向づけ(RIR)
    • 機能的コミュニケーション訓練(FCT)
    • 消去(EXT)(これもものによるな)
    • 分化強化(DRA/I/O)
  • 要求
    • 機能的コミュニケーション訓練(FCT)
    • 消去(EXT)(これもものによる)

注意書きとして「さらに、これらの実践を行うために、視覚的なサポートプロンプトが使用されます。」とあります。つまりこの2つは、自閉スペクトラム症の方との関わりでは、常に上記のような EBP と一緒に使われている、と考えていいと思います。

AFIRM FBA Brief Packet (Updated 2022) の目次

『根拠に基づく実践の書類セット:機能的アセスメント』(表紙含めて全39ページ)

目次

  • 機能的アセスメント(Functional Behavior Assessment)4
  • エビデンス・ベース( Evidence-base)5
  • 決定木(Decision Tree) 8
  • 機能的アセスメントの手順(FBA Assessment Procedures)9
  • 計画チェックリスト(Planning Checklist) 10
  • 強化子チェックリストとサンプリング(R+ Checklist & Sampling)11
  • ABC 分析のためのデータ集め(Data Collection: A-B-C )14
  • 行動の散布図(頻度図)(Data Collection: Scatterplot)15
  • 仮説を書いてみる(Hypothesis Statement)16
  • 追加の根拠ある実践(Additional EBPs)18
  • 行動介入計画(Behavior Intervention Plan)19
  • 記録用紙:イベント(Data Collection: Event Sampling )21
  • 記録用紙:持続時間(Data Collection: Duration (Time))22
  • 記録用紙:頻度(積み木タイプ)(Data Collection: Duration (Bar) )23
  • 記録用紙:代替行動(Data Collection: Replacement Behavior)24
  • ステップ・バイ・ステップ実践ガイド(Step-by-Guide)25
  • 実施チェックリスト(Implementation Checklist)30
  • 教師へのヒント(Tip Sheet for Professionals)31
  • 保護者へのヒント(Parent’s Guide)33
  • 追加資料(Additional Resources )34
  • CEC の基準(CEC Standards (CEC, 2020) )35
  • 用語集(Glossary )36
  • 参考文献(References )38

※ 各技法(実践法)ごとに、ページ数はいろいろですが、このような Brief Packet がついています。


さらに深めたい人のために

『3ステップで行動問題を解決するハンドブック―小・中学校で役立つ応用行動分析学』

大久保賢一著
2019年発行

 この本の「第2章 問題となる行動を解決する3ステップ」にはここで扱っている項目「機能的アセスメント」のことが、わかりやすく書かれています。

 「わかりやすく」とは言っても、この章の最初から最後まで通して読んでやっと「そういうことか」とわかります。このページの冒頭で書いたように、ぱっと短い言葉で定義できて、使える、みたいなものではないですね。

『スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援』
ディアンヌA.クローン/ロバートH.ホーナー著
野呂文行/大久保賢一/佐藤美幸/三田地真美訳
原著 2003 日本での翻訳・発行 2013

 スクールワイドPBS(School Wide Positive Behavior Support : SWPBS)について書かれている。

 PBS ではおおいに機能的アセスメントを活用し、行動支援計画を立てる。それを学校全体として取り組むための、

  • 考え方
  • アセスメントのやり方と実際に使う表の例
  • 行動支援計画の立て方と実際に使う表

など、チームで情報共有しつつ、どう解決していくかを詳しく書いている。